個人賠償・借家人賠償・修理費用補償の違いは?【賃貸住宅の火災保険】
賃貸住宅の火災保険(家財保険)に入るときに、迷ってしまいがちな補償。
今回は、個人賠償・借家人賠償・修理費用補償をまとめてわかるようにしてしまいましょう。
人に危害を加えてしまうということ
「自分は加害者になるかもしれない」
まず、こんなことを考えたことはありますか?
ないですよね。笑
将来の暗い話なんか考えたくないものです。
ただ、結構身近に起こることもあるのです。
チャリでおばあちゃんをひいてしまった
友達のスマホを落として壊してしまった
旅行先で他人にぶつかり、その人のカメラを壊してしまった
ごめん!で済めば良いですが、お金で解決しなければならないこともあります。
この「お金で解決」することは、じつは法律で決められているのです。
相手から「あなたが悪いでしょ、直しなさい!」と言われた場合、自分には直すという責任が発生します。
この責任のことを損害賠償責任(そんがいばいしょうせきにん)と言います。
数千円の修理代ならまだ良いですが、高価な物を壊したり人が亡くなったりした場合などは、1億円以上を支払わなければならないこともあります。
とても怖いですよね。
このような時に自分の肩代わりをしてくれるものが、個人賠償責任保険です。
個人賠償責任保険
日常生活で損害賠償責任を負ったときに使える保険です。
先ほどの例のように、自転車事故でも人の物を壊したときでも保険を使えます。
賃貸住宅に関していえば、
水を出しっぱなしにして、
下の部屋を水浸しにしてしまった
こようなケースでも保険を使えます。
ただし、火事などを起こして大家さんに弁償するときは保険を使えないのです。
じつは個人賠償にはルールがあり、
・自分が持っている物
・自分が使っている物
・自分が管理している物
これらについては、保険を使えません!というルールになっています。
借りた部屋は、自分が普段から使っていますし、自分が管理しているものでもあります。
よって、借りた部屋自体を修理するときに個人賠償は使えないのです。
ここで登場するのが、借家人賠償責任保険です。
(しゃっかにんばいしょうせきにんほけん)
借家人賠償責任保険
大家さんに対して損害賠償責任を負ったときに使える保険です。
大家さんから借りた部屋を壊してしまい、部屋を元に戻すためのお金が保険から出るというものです。
これがあれば大家さんへの弁償はOKです。
ここまでのお話は、
自分が壊した
→法律的に修理しなければならない
というものでした。
法律的に、という部分がポイントです。
では、次のケースを考えてみましょう。
修理費用補償
ドアのカギを壊されてドロボーに入られた
この場合に悪いのはドロボーなので、自分は悪くありません。
法律的には、自分は弁償しなくて良いのです。
しかし部屋を借りるときの約束(賃貸借契約)には、「借りたものは元に戻して返してね」と書かれています。
よって自分が悪くなくても、ドアやカギを修理しなければなりません。
自分は悪くないけれども、契約上直さなければならないときに肩代わりしてくれる保険が、修理費用補償です。
ここまでわかれば、保険を自分で選ぶことはできるかと思います。
もう一歩踏み込んでみたい方は、ここから下もみてみてください。
法律からみる火災保険
責任の種類
個人賠償と借家人賠償は法律と関わるので、少しだけ法律について掘り下げてみます。
損害賠償責任には、種類があります。
「約束を守らない責任」と「やらかした責任」の2つです。
自分が動かないことで生まれる責任です。
例:借金を「返さない」
直すべき物を「直さない」
(名称:債務不履行責任)
自分が動くことで生まれる責任です。
例:物を「壊す」 人を「殴る」
(名称:不法行為責任)
やらかした責任には、さらに種類があります。
・やらかした (過失)
・超やらかした (重過失)
・わざとやった (故意)
この種類によって責任が変わったりもします。
失火法(しっかほう)
もう一つ知識として、ちょっと変な法律を紹介します。
火災が広がり近所の家を燃やしても、
弁償しなくていいよ。
(名称:失火ノ責任ニ関スル法律)
なんだかズルいようなルールですね。笑
しかし昔の日本は、木で作られた住宅ばかりで火災が多かったため、必要なルールだったのです。
こういう法律が今も残っていることを頭に入れておきましょう。
それではこれら法律の話を、賃貸住宅に当てはめて考えてみましょう。
火災を想定してみます
自分の部屋(左側の絵)から出火したとします。
①自分の部屋を燃やした
この部屋は大家さんに借りた部屋なので、元に戻して大家さんに返す約束があります。
この約束を破ると、約束を守らなかった責任を問われます。
また、火をつけて部屋を燃やしてしまったというやらかした責任も問われます。
やらかした責任には種類があるとお話しました。
・やらかした →失火法で責任なし
・超やらかした →責任あり
・わざとやった →責任あり
このようになります。
②近所の部屋を燃やした
まず、自分が近所の部屋を修理するという約束はもともとしていません。
よって、約束を守らなかった責任は問われません。
ただし、やらかした責任は問われます。
先ほどと同じく、
・やらかした →失火法で責任なし
・超やらかした →責任あり
・わざとやった →責任あり
このようになります。
まとめ
法律の種類と、使える保険をまとめます。
やはり「借家人賠償」と「個人賠償」のどちらにも加入することがベストであるとわかりますね。
どちらも「あまり起こらないけれども起こったらまずいこと」に備えることができる、保険らしい保険です。
どちらも保険料はとても安いです。
ケチらずに、しっかりと準備しておきましょう。